2009年12月26日土曜日

松沢呉一著『クズが世界を豊かにする』表紙撮影後記


最近は知人への無理矢理な営業の甲斐もあり、カメラマン仕事が増えています。
嬉しいです。
すると、なんと他人様の単行本の表紙まで撮影することに(!)。
やはり、神様の他に見てくれている人が2、3人はいるものですね。
これは相当評価されている気がしますというか、機嫌いいです。

媒体は12月18日に発売された『クズが世界を豊かにする』。
著者は日頃からお付き合いのある松沢呉一氏
版元はお隣のポット出版さん。
担当編集は以前の勤め先で後輩だった高橋くん
……まさかコネオンリー……いやいや、コツコツと雑誌やウェブに出してきた写真のできが遂に評価されたと信じましょう!

ということで、11月某日、張り切って撮影打ち合わせに臨んだのですが、「キャスティングと小道具の用意も込みでお願いします」と高橋くん
続けて、「モデルも適当にカワイイ人見つけてください」。
撮影日のリミットは1週間もありません。
「これって……?」と思い松沢氏に確認したところ「気に入らないことがあるといけないから、先生(僕のこと)に全部任せるよ」とのこと。
日本一のエロ本蒐集家である業界の大先輩にそうまで言われては「まさか雑用……」と口にまで出かけた言葉を飲み込むしかありません。
気をとりなおし、なべやかん氏元氣安氏、知人女性をなんとかセッティング。

前日出た39℃超の高熱を気合いで抑え、それは張り切って臨んだ撮影当日、出演者・スタッフ皆さまの協力もあり、快調に撮影は進みます。
担当編集の高橋くんも「寄り(クローズアップ)のカットがいいですね!」とノリノリ。
やはりかつては同じ釜の飯をなんとかしていただけあって、僕の腕を信頼してくれている雰囲気がひしひしと伝わってきます。
著者の松沢氏からはヨコ位置(横長)の写真だけでいいよ、と事前に言われていたこともあり、ヨコ位置の寄りのカットを多めに撮って撮影終了。

やっぱり、信頼できる仲間でつくったものっていいものができるんですよ。
そして撮影翌日、ほら、いざできあがってきた装丁を見ると……ん? タテ位置の写真!?
……。
……。
「やっぱりヨコ位置だとどうしても人物が小さくなっちゃうんで引きの写真をトリミングしました」
た、高橋……。
信頼とか……。
写真家としての世界観とか……。

ま、その後二転三転あってヨコ位置の装丁に落ち着いたのですが、カメラマンとしての信頼なんて、400年くらい早かったようです。

Modern Freaks では、皆さまからの写真撮影のご依頼をお待ちしております。

※松沢氏の新刊『クズが世界を豊かにする』(ポット出版)はサブタイトルにあるようにYouTubeを通じてのインターネット社会論です。オリジナルの視点満載の興味深い一冊です。

2009年11月29日日曜日

誰がこれを食おうか/ウオノエ



この生物を知ったとき、2週間ほどは頭の中から離れなかったです。
それほど僕の鳥肌ツボにはまる寄生生物“ウオノエ”。

鯛や鰺の舌を喰ってそこにスポッと嵌るという世界観も、
真っ白でいやにホーリーなビジュアルも、完璧です。
しばらくは夢どころか白昼に出てきます。

まさか本当にこの目で見てしまおうとは。
それを目の前で生で喰われようとは。
それがトムヤムクンに似た味だと聞かされようとは。
その撮影をしようとは。
ウオノエを知ってから撮影まで、かかった日数2週間足らずです。
なんて仕事してるんだと、いまさらながら痛感しました。

さらに今回の調査では口の中に夫婦が同居してることもわかり(手前の小さいのが夫)、
期待通りにゾクゾクさせてくれました。

しかし、喰うかね。
生で。
虫喰い芸人・佐々木孫悟空氏の伝説を目撃し続けてきましたが、今回ばかりは……。

さて、恐らく世界初のウオノエ生食映像を始めとした珍奇深海魚グルメレポートは11/30発売の『実在する!! 深海の大怪獣』(ミリオン出版)で拝めます。

オオグソクムシの串焼き食映像もあるでよ。

2009年11月27日金曜日

Starting Over(笑)/ウェブ再開。





いやぁ、更新できないッスね。

ちゃんとします。

最近の活動報告を兼ねてしばらく更新していきます。

コアマガジン『BUBKA(ブブカ)1月号』インタビュー&撮影させていただきました。

掲載されないものの中にもの凄い迫力の写真があったので載せてみます。

なんで今、たけし軍団なんだろう。

そんな方はぜひ。

軍団さんは最近の方々とは本職感というか、凄みが違いますね。

ちゃんと笑えます。

発売◎11月30日(月)
定価◎460円(税込)
発行◎コアマガジン

※追記/おわかりでしょうが左から井手らっきょグレート義太夫の両氏です。書き忘れました。

2009年8月9日日曜日

オーストラリア視察03/淫語三重殺免れる


オーストラリア視察は、まさにいきものがかりという感じで珍しい生物をみてまわったツアーだったのですが、ここらで少しロスト・イン・トランスレーション的なシャレオツなネタも披露しておきましょう。

シドニーの動物園&水族館まで歩くついでに、冬物のセールを始めた大手デパートDavid Jonesに寄ってみました。
ラインナップ自体はやはり戦前の印象通り、悪い意味でオージーっぽいというか垢抜けない感じではありました。
超高級以外の、いいブランドが皆無でしたね。
しかし近年AFCへ加入し、けっこうな親日国のくせにコム・デ・ギャルソンすら置かないのはどういう理由なんでしょうね。
体型すかね。
じゃ、ワイズでもいいのにね。
ちなみに個人的な雑感ですが、シドニーよりアデレードの方がおしゃれ方向としてはアリだと思いました。
捻挫したアブリルみたいな、ちょいゴスのティーン娘とか、普通にかわいい感じでした。

さて、それはさておき、シドニー最大手のデパートメントで国産のドメスティック・デザイナーなんてのをコツコツ物色していたのですが、そこでとんでもないオージー・ブランドに出くわしてしまいました。

画面中央付近。

shakuhachi”です……。

親日国故の悲劇というのでしょうか。
哀しいかなそういう意味では合っていて、レディースです。
さて、そのデザインがもの凄いビッチ・テイストな意志が感じられたかというと全くそうではなく、セックス・アピール的にはだいぶ抑えが効いていました。
やっぱり、アレに疎遠そうな日本人が69とか大書したT シャツを着ているのを目撃してしまったときの冷や汗というか、やりきれなさに襲われましたよね。
フェラガモが別フロアにあり、Max Maraは通りの向こうにあったので最悪の事態は避けられていたのですが、それも意図された平和ではないのでしょうからね。

ひとり内心、冷や冷やした午後でした。

(追記:その下の“Life with Bird”もどうかと思いますがね)

2009年7月30日木曜日

オーストラリア視察02/運命的な気分




前回の更新からだいぶ離れたのでもはやオーストラリア感覚など微塵も体に残っていません。
それほど『下-1グランプリ』には何もかも持っていかれました。
しかも、イベント終了直後から始まったエンドレスなロケ日程。
なぜいい大人にもなって夏休みシーズンに週2度も富士山に行かねばならないのだろうか、今週も改めて人生を考えさせられます。

さて、今回の写真はカンガルー島で出会った、もの凄い格好いいやつの写真です。
オオハシをはじめ個人的にもともと変な鳥が好きではあったのですが、このカソワリー(=Cassowary)には一目でやられました。

全く捕まった感じがしない威厳ある風貌、巨大さ、あまり使わない角、ごつい足、殺傷能力、絶滅の危機、雌の方が強い、私が常々心懸けている服装=ほとんど真っ黒でいながらワンポイントでどぎつい配色と、外見からライフスタイルまで、私の好みを全く熟知したかのような“全部のせ”の生物です。
ダチョウ、エミューに次ぐ世界で3番目に大きな鳥でありながら、体重は2番目という感じも地味に意外性があっていいのですが、日本名で“ヒクイドリ”っていうのが気になって調べました。
来てるんですね、相当昔に
Wikiだと江戸時代末期ということですが、“火喰い鳥”だったとは……好感度上がる一方です。
じゃ、手塚治虫の『火の鳥』のか!?と思いましたが、どうやら違うという流れのようです。
どちらかといえば“Blue Meanie(a.k.a "Yellow Submarine”)ですかね、あんな能天気ではないですが。

ともかく鯨にもカモノハシも、日常的に轢き殺されたカンガルーの多さにも驚きましたが、カソワリーの存在には、いろんな意味で励まされたような気が勝手にしたのでした。
こんな美しく恐ろしい鳥を狩って食べるような生活も、気になる。

(続く)

2009年7月12日日曜日

オーストラリア視察01/浅過ぎる捕鯨調査




先週からなぜか真冬のオーストラリアに“視察旅行(X51.ORG佐藤氏のマネ)”に行ってきました。
何個か今後引っ張れそうなネタを拾ってきたのですが、まだなんとも整理がつかないのでダラダラとこの編集後記ページに上げてゆきます。

まずはシドニー近海でWhale Watchingに行った時の模様。
冬の寒さをしのぐため北上する鯨を観るにはこの時季が絶好とのことで、ガイド女史(シドニー在住10年)に連れていってもらいました。

はっきり申しますと「おい、日本人がクジラ観にきてるぜ! 食べられるから早く逃げた方がいいぜ」的な展開を豪州人から見舞われることを半ば期待していたのですが、全くの見当外れ。
同乗の現地人研究者には丁寧に潮噴きの見つけ方を教えてもらいました。

船で近づいていい距離は年ごとに変更されるのですが、今年は300メートルまでが限界。
そのあと鯨の興がのって近づいてくる分にはいいとのこと。
船酔いにめげそうになりながらも後半にはアクティブなザトウクジラが現われ、見事にジャンプするところまで観られたのですが、その瞬間の写真は撮れず。
動物系写真家諸氏の苦労を痛感しました。

帰り際にガイド女史と雑談。
「景気は?」「美味いレストランは?」等に紛れて、
「日本人なのにオーストラリアで鯨ガイドしててなんか問題ないですか?」と質問。
「観光シーズンのこの時季と日本が捕鯨する夏(2月頃)は鯨が新聞の一面に載ることが多いです。“さぁ、鯨を観よう”っていうのと“日本の船がここまで捕りにきてる”っていうことで。だから捕鯨のシーズンは日本人であることを強調したくはないですよね……」

悪いこと聞いたなって気と、いいこと聞いたなって気と。

(続く)